今回は『「日経平均10万円」時代が来る!』について解説します。
本書は、日本の未来に明るいイメージを持てていない人や、日本株に投資するべきか迷っている人、新NISAを利用するべきか考えている人など、幅広い読者に向けて書かれています。
著者である藤野英人さんの豊富な経験と知見に基づく、投資の勝ち筋を学ぶことができる一冊です。
著者:藤野英人さんのプロフィール
藤野さんは、投資家(ファンドマネジャー)・経営者・作家・そしてYouTuberでもあります。
レオス・キャピタルワークス株式会社の創業者の一人で、代表取締役会長兼社長・最高投資責任者(CIO)を務めています。
日本の中小型・成長株の運用に長けており、自身が運用する投資信託「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみ年金」は高いパフォーマンスをあげています。
「日経平均10万円」時代が来る!:要約
本書では、藤野さんが、日本と世界の経済環境の変化やテクノロジーの進化などを分析し、日経平均株価が10年後に10万円を超えるという予測を展開しています。
また、そのシナリオのもとで、投資家やビジネスパーソンがどのように行動すべきか、どのような企業に注目すべきかなど、具体的なアドバイスもしています。
本書を読めば、日経平均10万円の世界がどのように実現するのかを知り、自分の資産やキャリアを自己管理するための具体的な方法を学ぶことができるでしょう。
キャッチコピーをつけるなら『夢か?悪夢か?日経平均10万円の世界!』です。
第1章:海外投資家が日本株を買っている理由
本章では、「眠くて退屈」だった日本の“大企業”が変わり始めたと語っています。
その要因は次のとおり。
大企業の変革と新展開
日本の大企業がデジタル化やグローバル化などの環境変化に適応し、新たな事業やイノベーションを積極的に展開していることが挙げられます。
例えば、トヨタは自動車メーカーからモビリティカンパニーへの変革を遂げ、環境に優しい技術の開発に注力しています。
同様に、ソニーもエンターテイメント製品だけでなく、センサーや人工知能などの先端技術に進出しています。
これにより、大企業は世界に挑戦する新しい姿勢を見せ、その変革が評価されています。
株式市場の割安度と再評価
さらに、日本は世界の先進国の中で最も株式市場の割安度が高く、大企業はガバナンス改革やデジタル化などによって業績や収益性を向上させ、これが海外投資家に再評価されています。
中小企業の競争力と成長の機会
また、中小企業もニッチな分野で競争力を発揮し、海外市場への進出やM&Aによって成長の機会を拡大しています。
株式市場の強い耐久力とリスク回避の需要
日本の株式市場は米中対立や新型感染症の影響にも強い耐久力を示していて、これがリスク回避の需要を引き起こしているのです。
これらのおかげで、海外投資家にとって日本株が魅力的な投資対象になりえるのです。
日経平均が10万円になるということは、日本の経済が成長し、企業の業績が改善し、株主に利益が還元されます。
しかし、それはすべての人にとって幸せなこととは限りません。
日経平均が上がれば、インフレが進むからです。
インフレが進むと、物価や賃金が上昇し、生活費が高くなります。
また、税金や社会保障費も増える可能性もあります。
そんな状況では、株式投資をしていない人や、貯蓄や年金に頼っている人は、購買力が低下し、生活が苦しくなるでしょう。
そうなれば、経済や社会の格差が拡大してしまいます。
格差が拡大すれば、不平等や不満が高まり、社会の安定や信頼が失われていくでしょう。
第2章:「日経平均」は10年後に10万円を超えている
残念ながら、この流れはとめられそうにありません。
先に述べたように、日本株は、様々な要因によって上昇トレンドにあるからです。
では、私たちはいったいどうすればいいのでしょうか?
貧しくなりたくないのであれば、投資に参加するしかありません。
しかし、投資経験がない人がいきなり始めるのは危険です。
まずは投資に対する正しい知識を身につける必要があります。
そのうえで新NISAを利用しながら少額から始めることをおすすめします。
新NISAは2024年1月から始まった新しいNISAの制度です。
長期的な資産形成や老後資金の確保に有効な制度で、日本株だけでなく、外国株や投資信託なども対象となっていて、多様な投資が可能です。
税金がかからないので、投資のパフォーマンスをぐっと上げられます。
実際に投資する場合、自分のリスク許容度や目標期間に合わせて、定期的に見直しや適切な資産配分を行いましょう。
第3章:生成AIの本格普及が「運用のあり方」を変える
素人が自分で投資判断をおこなうのは難しいかもしれません。
そこで本書では、生成AIの活用を提案しています。
生成AIは、人間のデータを学習し新たな情報を生成できる人工知能であり、株式市場や企業業績の分析に応用され、投資判断やポートフォリオ最適化が可能です。
感情やバイアスに左右されず客観的かつ合理的な投資判断を行う特長があり、また、人間が見逃す可能性のあるパターンや相関関係を発見し、新たな投資機会やリスクを発見する能力も備えています。
ただし、AIはまだまだ発展途上の技術で間違うこともあります。
必ず最終判断は自分で行いましょう。
あくまで投資は自己責任ですし、勉強は必要です。
第4章:「10年後」をつくる銘柄はこれだ
本書では、それぞれのグループに属する具体的な企業名を紹介しています。
藤野さんは、日経平均10万円の世界で成功する企業を、4つのグループに分類しています。
そのグループとは、①「デジタル化の先駆者」②「環境問題の解決者」③「医療・健康の革新者」④「グローバルニッチトップ」の4つです。
「デジタル化の先駆者」
オンラインサービスやクラウドコンピューティングなど、デジタル技術を活用して、業界の構造やビジネスモデルを変える企業です。
例えば、(4385)メルカリが該当します。
メルカリがデジタル化の先駆者になれる理由はこの3つ。
- スマホ完結型のフリマアプリとして、手軽に出品・購入できるサービスを提供している。
- 商品のジャンルを絞らず、幅広いユーザー層にアピールしている。
- カスタマーサポートを充実させ、安心して取引できる環境を整えている。
これらの理由により、メルカリはデジタル技術を活用して、業界の構造やビジネスモデルを変えることに成功しています。
引用元:ビジネス+IT
「環境問題の解決者」
再生可能エネルギーや水素など、環境に優しいエネルギーの開発や普及に貢献する企業です。
例えば、(7203)トヨタ自動車が該当します。
トヨタ自動車が環境問題の解決者になれる理由はこの3つ。
- 水素や電気自動車などの環境に優しい技術を開発し、自動車メーカーからモビリティカンパニーへと変身している。
- 自社の事業活動によるCO 2 排出量を2035年に2019年比で68%削減するという目標を掲げており、SBTiから目標の認定・承認を得ている。
- クルマの生産や工場の運営においても、省エネや再生可能エネルギーの利用など、環境負荷を低減する工夫をしている。
参考サイト:SDGsへの取り組み | サステナビリティ | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト (global.toyota)
- SBTiはScience Based Targets initiativeの略。
- 科学に基づいた気候目標を設定するための国際的なイニシアティブ。
- 2015年にWWF、CDP、WRI、国連グローバル・コンパクトによって設立。
- 科学的な根拠に基づいた温室効果ガス排出量の削減目標を設定し、実行・支援する。
- 企業の目標を評価し、認定し、公表する役割を果たしている。
「医療・健康の革新者」
遺伝子治療やバイオテクノロジーなど、医療の最前線で革新的な技術やサービスを提供する企業です。
例えば、(4523)エーザイが該当します。
エーザイが医療・健康の革新者になれる理由はこの3つ。
- 認知症・がん・グローバルヘルス領域において、革新的な創薬やソリューションを提供しており、人々の「健康憂慮の解消」や「医療較差の是正」に貢献している。
- オープンイノベーションの推進により、世界の優れた研究機関や企業と協力し、神経変性疾患やがんなどの難治性疾患に対する新たな医薬品や診断法の創出を目指している。
- 多様性を重視し、様々な文化や生活様式、経験を持つ従業員が多様な考え方や新しいアイデアを自由に表現することにより、斬新なアプローチを生み出している。
参考サイト:オープンイノベーション | イノベーション | エーザイ株式会社 (eisai.co.jp)
「グローバルニッチトップ」
グローバルニッチトップとは、ニッチ分野において、世界市場でトップの地位を築いている企業のことです。
例えば(6920)レーザーテックが該当します。
レーザーテックがグローバルニッチトップになれる理由この3つ。
- 半導体製造に必要なマスク欠陥検査装置を開発・製造しており、この分野で世界シェアのほぼ100%を獲得している。
- 半導体産業の最先端技術であるEUV露光装置に対応したマスク欠陥検査装置を世界で初めて開発し、世界の半導体メーカーや装置メーカーと強固な信頼関係を築いている。
- 創業以来、「その時代にないものを開発する」という経営理念を掲げており、売上の10%を研究開発に投じ、全従業員の6割強がエンジニアという研究開発に特化した経営体制を取っています。
参考サイト:経済産業省20200630002-1.pdf (meti.go.jp)
以上のように、レーザーテックは、半導体製造におけるニッチ分野で、高い技術力と付加価値を持ち、世界のリーダー企業と緊密に連携しています。
どこも優れた人材とテクノロジーを抱えている会社ばかりですが、情報はすでに古くなっている可能性があります。
売買される方は、ご自身で最終確認・判断を行ってください。
第5章:10年後を「みんなで」考える理由
本章では、日経平均10万円の世界では、経済や社会の格差が拡大し、多くの人が不安や不満を抱える可能性があると指摘しています。
このような危機的状況を乗り越えるには、個人だけでなく、企業や政府、社会全体が協力して、日本の未来に向けて積極的に行動する必要があります。
そこで本書では、日本の未来をより良くするために、このような提言がされています。
- 企業:株主や従業員だけでなく、社会や環境にも責任を持ち、持続可能な成長を目指すべきである。
- 政府:税制や社会保障などの制度改革を進め、経済の活性化や格差の縮小に努めるべきである。
- 個人:自分の資産やキャリアを自己管理し、自分の意思や価値観に基づいて投資や消費を行うべきである。
- 社会:多様性や共生を尊重し、新たな価値やイノベーションを生み出すための環境を整えるべきである。
日経平均10万円の世界を幸せな社会にするためには、みんなで一緒に考えて行動しなくてはいけません。
行き過ぎた自己責任論にはもう、歯止めをかけませんか?
「日経平均10万円」時代が来る!:まとめ
- 日本の経済環境がインフレに転換し、日経平均が10万円になる可能性が高い。
- 日経平均が上昇することは、日本の企業や投資家にとっては好機けど、日本の社会や個人にとっては必ずしも幸せとは限らない。
- 新NISAやAIなどの新しい制度や技術の活用方法や注意点を紹介し、自分の資産やキャリアを自己管理する。
- 日本の未来をより良くするために、企業や政府、社会全体が協力して、経済の活性化や格差の縮小に努める。
以上、変化の激しい時代を生き残れるよう、まずは現状を認識し、正しい知識を持って投資に臨みましょう。
本記事の内容は、youtubeでも視聴することができます。
コメント