今回は、投資熊さんの『これ一冊でクマらない!最強の配当株投資』について解説します。
投資熊さんは、配当株投資やインデックス投資を中心に活動する投資家で、ブログ『投資熊のゆるふわ資産形成』を運営しています。
投資の経験を共有し、具体的な投資戦略や運用実績を公開しており、初心者から経験者まで幅広い層に支持されています。
そんな投資熊さんによる本書の投資スタイルは『安定した配当収入を目指しつつ、成長機会も逃さないバランス型投資』です。
- 投資方針の決め方
- 優良配当株を選ぶポイント8選
この記事を読めば、ファンダメンタルの基本を身につき、優良な配当銘柄で安定したポートフォリオを作れるようになるでしょう。
第1話:投資方針の決め方
まずは、実際に投資を始めるまえに、投資方針を決めましょう。
事前に投資方針を明確にしておけば、銘柄選びやポートフォリオ作りに一貫性を持たせられます。
個別銘柄を買う配当株投資の場合は特に、自分軸を持っておかないと感情に左右されて、長期的な投資が難しくなるのよね。
- 投資目的
- 資産配分
- リスク許容度
- 運用期間
投資目的
- 長期的な資産形成
- 目先の収益の向上
長期的な資産形成が目的であれば、配当株投資よりも、オルカンやS&P500を積み立てるといったインデックス投資の方が最適です。
そうではなく、現在使える収益を増やしたいのであれば、配当株投資の方が向いています。
本書は配当株投資が目的なので、収益の向上が目的になります。
資産配分
収益が目的だとしても、とにかく高い配当が欲しいのか、あるいは現状は低くても増配が期待できる方が良いのか、あるいはその両方を組み合わせたいのかによって、ポートフォリオに組み入れる銘柄が異なってきます。
たとえば、(4502)武田薬品工業は、現状の利回りが約4.55%と高いですが、同時に配当性向も100%を超えることが多く、増配はほとんど望めません。
高配当株のなかには、株価下落によって高配当化しているだけで、業績が悪く、減配や無配のリスクがある銘柄も含まれているから、注意しないといけないのです。
一方で、たとえば、(6920)レーザーテックは、現状の利回りが約0.64%と低いですが、11年連続増配を続けており、2013年に6円だった配当金は、2024年には191円と、30倍以上に増えています。当時約300円だった時からガチホしていたら、現在の利回りは約63%にもなる計算です。
ここまで極端な銘柄は滅多にありませんが、増配し続ける銘柄を選んでおけば、インフレにも対応できるでしょうね。
リスク許容度
投資を行う以上、リスクは避けられません。
リスクが無ければリターンもあり得ないからです。
よくある誤解として、リスクは『損をする可能性』や『資産の下落幅』のことを差すと思われがちですが、実際は『価格の振れ幅』のことであり、この振れ幅が大きいか小さいかが、『リスクが大きい』や『リスクが小さい』という意味になります。
したがって、リーマンショックなどの暴落もリスクが大きいと言えますし、現在の株高もリスクが大きいと言えるのです。
リスクが大きければ損も得も大きくなるし、リスクが小さければ損も得も小さくなるのね。
だけど、配当が目的であれば株価の動きは気にしなくても良いのでは?
一般的に、配当株投資はそう言われがちですが、だからと言って、本当に株価を気にせずにいられる人はごくわずかです。
得する分には大歓迎でしょうが、損するとなったら、特に投資初心者は狼狽売りをしてしまいがちです。
こればかりは実際に暴落に遭わないと、本当のリスク許容度はわかりません。
メンタルよわよわの個人投資家は、少額投資から始めて、自分がどれだけリスクに耐えられるか見極めるのが先決です。
間違っても全ツッパなんてしないようにね。
運用期間
配当株投資の場合、多くの投資家は『一生保有し続けたい銘柄』を中心にポートフォリオを組むことになります。
しかし、運用期間が長くなればなるほど、配当を出し続けてくれる銘柄選びの条件は厳しくなっていきます。
どんなに良い銘柄に思えても『100%安心安全はありません』。
それでもガチホするべきなんだろうけど……。
必ずしも永久保有にこだわる必要はありません。
想定していたシナリオから外れたのであれば、利確や損切をしても構わないのです。
配当株投資に限らず、投資の目的は資産の拡大や収益です。
減配や無配に転じたり、損を出す公算が高まれば、ポートフォリオの再構築を柔軟に検討しましょう。
ただし、個別株への投資は、情報のアップデートや勉強がつねに必要になります。
この『投資に充てられる時間や情熱』も確認しておきましょう。
第2話:優良配当株を選ぶポイント8選
- 株価
- 配当方針・配当履歴・配当性向
- 売上高・EPS・営業利益率
- ROE・ROA
- 自己資本比率・BPS
- キャッシュフロー・現金
- PER・PBR
- 業界分析と企業ポジション・強み
本書では13のポイントに分かれていますが、ここではそれらをまとめて、8つのポイントとして解説します。
具体例として、技術者系の人材派遣会社、(2163)アルトナー・ (4641)アルプス技研・(6028)テクノプロHD・(9744)メイテックグループHDの4社を比較しながら、各ポイントをチェックしていきます。
技術者系派遣業界は、IT人材の需要増加やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、成長を続けています。
2022から2023年のデータによると、業界規模は約1兆円で、成長率は15.6%に達しています。
引用元:業界動向サーチ
特にIT分野での需要が高く、今後も堅調な成長が見込まれています。
引用元:レバテック
株価
株価は現在だけでなく、過去からの推移をチェックしましょう。
それもできれば、長期(10年以上)・中期(5年程度)・短期(1年以内)の3パターンで確認すると良いです。
中長期的には、株価が上昇トレンドの銘柄を選ぶと良いです。
業績が伸びていれば、必然的に株価も伸びるからです。
短期を見る理由は購入タイミングを計るためです。
銘柄選定は中長期で、購入タイミングは短期で見極めれば良いのね。
4社の長期チャートを比べると、いずれも上昇しています。
これは業界全体が上向いていると判断して良いでしょう。
配当方針・配当履歴・配当性向
配当方針は、配当株投資にとって重要です。
企業がきちんと配当を支払う気があるかどうか、よく確認しましょう。
このとき重要な指標として『株主資本配当率(DOE)』と『配当性向』が挙げられます。
- 株主資本配当率(DOE)
企業が株主資本に対し、どの程度の配当を出しているかを示す指標。
大きいほど配当を通じた株主還元額が大きい。
高すぎると自己資本の減少リスが伴う。
2~8%程度が適正範囲。 - 配当性向
当期純利益のうち、どれだけを配当金の支払いに充てたかを示す指標。
大きいほど配当を通じた株主還元額が大きい。
高すぎると持続可能性が低くなる。
30~50%程度が適正範囲。
これらを詳しく分析するには、各社の短信決算や中期経営計画を読み込む必要がありますが、手間を省きたい人は『IR BANK』などでチェックしましょう。
株主資本配当率は、アルトナーが19.14%、アルプス技研が12.64%、テクノプロが11.19%、メイテックが18.86%。
配当性向は、アルトナーが75.8%、アルプス技研が55.6%、テクノプロが52.6%、メイテックが72.1%となっています。
4社とも、株主資本配当率も配当性向も高い水準なので、株主還元に積極的といえそうです。
実際、配当履歴を確認すると、アルトナーは11年連続増配で、過去10年間の増配率は9.14倍。
アルプス技研は減配こそあるものの、増配傾向を続けており、過去10年間の増配率は2.72倍。
テクノプロは9年連続増配で、過去10年間の増配率は2.37倍。
メイテックグループは減配こそあるものの、増配傾向を続けており、過去10年間の増配率は3.91倍となっています。
アルトナーは、配当性向は高いけど、減配が無く、増配率も一番高いから、ほかの3社より魅力的に映りますね。
売上高・EPS・営業利益率
- 売上高
配当を出すには利益が必要で、その源泉になる。 - EPS
1株あたりの純利益のこと。 - 営業利益率
本業で効率良く稼いでいるかを表す。
この3つの指標が過去に比べて右肩上がりに伸びていれば、無配・減配のリスクは低く、逆に増配が期待できます。
単年度だけじゃなく、継続性を確認しないといけないわね。
4社のなかで一番売上高が大きいのはテクノプロ、EPSはアルプス技研、営業利益率はアルトナーとなっています。
いずれの会社も、すべて右肩上がりに伸びてはいるから、業界全体が好調だと言えそうです。
ROE・ROA
- ROE
自己資本利益率のこと。
株主が出資したお金を元手に、企業がどれだけの利益を上げたのかを示す指標。
数値が高いほど経営効率が良い。
8~10%が適正な範囲。 - ROA
総資産利益率のこと。
企業が保有するすべての資産を利用して、どれだけの利益を上げられたかを示す指標。
数値が高いほど効率的に稼いでいる。
5%以上あれば優秀。
ROEは、アルトナーが28.03%で、アルプス技研が20.76%、テクノプロが20.90%、メイテックが51.71%。
ROAは、アルトナーが18.99%、アルプス技研が13.26%、テクノプロが10.80%、メイテックが51.22%となっています。
メイテックがぶっちぎりで優秀ね。
ただし、この値は2025年だけ突出していているので、これが今後も続くのかが重要になります。
また、メイテックの『2024年3月期決算説明資料』を確認すると、ROEは30%程度になる計画のようです。
確認するサイトによって数値が異なっている場合があるので、違和感を覚えたら一次情報を確認してみましょう。
そのうえで、トレンドとしては、やはり持続可能な成長を続けていると言えそうです。
自己資本比率・BPS
- 自己資本比率(株主資本比率)
企業の安全性を示す経営指標のひとつで、会社尾総資本のうちに占める自己資本の割合。
自己資本が高ければ、負債よりも純資産の割合が大きく、健全に経営されている。
高すぎると成長のための資金調達を行っていないと判断することもできる。
適正な範囲は20~50%程度。 - BPS
1株あたりの純資産のこと。
企業の資産から負債を差し引いた純資産を発行済み株式数で割ったもの。
自己資本比率は、アルトナーが69.90%、アルプス技研が67.20%、テクノプロが52.40%、メイテックが52.60%となっています。
いずれも適正範囲内か健全すぎるくらいで、倒産リスクは低そうね。
BPSは、業種別に中央値を見て比較しましょう。
ちなみに全業種の中央値は約1,120円です。
引用元:ザイマニ
BPSは、アルトナーが395.59円、アルプス技研が848.53円、テクノプロが754.30円、メイテックが617.78円で、平均は654.05円になります。
アルトナーが平均よりかなり低いですが、伸びてはいるので、特に問題なさそうです。
キャッシュ・フロー・現金
- キャッシュ・フロー
事業を営む上で生じるお金(キャッシュ)の流れ(フロー)のこと。
キャッシュ・フローの種類は、営業CF・投資CF・財務CF・フリーCFの4つ。
- 営業CF
本業でどれだけ稼いだかを表す。
基本的にはプラスで安定している状態が理想だが、金融業は特殊。 - 投資CF
投資活動におけるキャッシュの動きを表す。
設備投資や人材投資なども含まれる。
企業を大きくするための投資で、マイナスでも必ずしもネガティブな要素ではない。 - 財務CF
金融機関から資金調達などをするとプラスになり、借入金の返済や配当の支払いを行うとマイナスになる。 - フリーCF
文字通り自由に使える資金。
増えている方が望ましいが、株主還元や設備投資などに使う場合は、この限りではない。
4社の各キャッシュフローを確認すると、金額の多寡の違いはあれど、およそ同じ流れになっています。
現金は文字通り現金ですが、現金同等物も含まれています。
- 定期預金(3か月以内の短期)
- 譲渡性預金
- コマーシャル・ペーパー
- 売戻し条件付現先
- 公社債投資信託など
しっかり稼げていれば、現金保有量は安定的に推移するか増えていきます。
もし急に減っているようなことがあれば、何かしらの問題が発生し、現金を取り崩している可能性があるので注意が必要です。
いずれにしても、数字の増減だけでなく、お金が何にどう使われているかを、詳しく分析したいわね。
PER・PBR
- PER
株価収益率のこと。
株価がEPS(1株あたりの純利益)に対して、何倍になっているかを示す指標。
小さければ割安、大きければ割高。 - PBR
株価純資産倍率のこと。
株価がBPS(1株あたりの純資産)の何倍まで買われているかを示す指標。
小さければ割安、大きければ割高。
4社のPERとPBRはこのとおり。
PERやPBRは、株価の変動に伴い日々変動します。
同業他社との比較や、自社の過去平均と比較しつつ、割安なタイミングを狙いましょう。
現状、この4社のなかでは、アルプス技研が比較的割安ですね。
業界分析と企業ポジション・強み
各企業の分析も重要ですが、業界の分析も同様に重要です。
- 『業界地図』を読む。
- 各社の決算資料を確認する。
- 業界団体が公開している資料を確認する。
これらを使って、業界の今後の展望や、業界内での各企業のポジションや強みを探りましょう。
そこまで調べる時間も情熱も無いんだけど……どうしてもやらなくちゃいけないのかしら?
たしかに、多くの個人投資家にとっては、大変な労力となるでしょう。
そこで、up主が実践している、簡単に確認する方法を1つ紹介します。
方法は、MicroSoftが提供しているブラウザの『bing』に『Copilot』という生成AIを使います。
Copilotは、Microsoftが提供するAIサービスの一つで、さまざまなタスクを支援するために設計されています。
windowsが搭載されているパソコンから無料で使えますので、これを使って質問してみましょう。
たとえば『日本国内の技術者系派遣業の業界を分析してください、また、(2163)アルトナーと(9744)メイテックと(4641)アルプス技研と(6028)テクノプロの企業ポジション及び強みをそれぞれ解説してください』と質問すると、このような回答が返ってきました。
さらに詳しく知りたい場合、同じスレッド内であれば、AIは先の質問内容を覚えているので、さらに深堀しながら質問すると良いでしょう。
回答の元になる情報源のリンクも示してくれるので、情報の真偽の確認も容易です。
情報にアクセスするための入り口として、この方法が一番便利だとup主は考えています。
みなさんもぜひ試してみてください。
ほかに効率的な方法があれば、ぜひコメント欄でみなさんと共有してくださいね。
4社の各情報の一覧まとめ
青色のセルは、4社のなかで一番良い成績を示し、赤字は、注意箇所とキャッシュフローのマイナスを示しています。
ほかの業種でも同様に比較・検討し、自分の投資方針に合う銘柄をポートフォリオに組み入れましょう。
最強の配当株投資:まとめ
- 配当金の仕組みや配当株投資の特徴、メリットとデメリットを理解することが重要。
- 銘柄選びのポイントを基に、安定した配当を提供する優良銘柄を選ぶ。
- 投資熊流のチェックシートを使って、銘柄の評価を体系的に行う。
- 分散投資の重要性を理解し、リスクを管理しながら効果的なポートフォリオを構築する。
- 定期的な見直しやリバランスを行い、長期的に安定した収益を目指す。
- 投資におけるメンタルの重要性を理解し、冷静な判断を下す。
以上、本書の内容は個別株の紹介ではなく、銘柄の分析方法やファンダメンタルに重きを置いていますが、内容がかなり充実しているので、すべてを紹介しきることはできていません。
- 配当株投資の基本的な概念
- 投資熊流優良配当銘柄チェックシート
- ポートフォリオの組み方
- ポートフォリオの維持管理方法
- 自分のメンタルを維持する方法
- 日米の配当株・ETF
- 配当金・分配金シミュレーション など
ポートフォリオの維持管理やメンタルの管理などは、脱初心者を目指す個人投資家にとって有益な情報となるでしょう。
さらに本書では、日本株・米国株・ETFを合わせた225銘柄が、業界別や累進配当別など、カテゴリー別に分けて紹介されています。
投資する心構えができたら、このなかから興味のある銘柄や業界を、今回紹介した銘柄の選び方を用いて選ぶと良いでしょう。
購入から管理・売却まで、この1冊で身につけられるわね。
読書や勉強に時間をかけられない人は、当ブログでも累進配当銘柄や増配傾向が強い銘柄など、優良な配当株をたくさん紹介しているので、参考にしてください。
本記事の内容は、youtubeでも視聴することができます。
コメント