今回は、片山晃さんと小松原周さんの『改訂版 勝つ投資 負けない投資』の『負けない投資編』について解説します。
本書では、片山さんが「勝つ投資編」を、小松原さんが「負けない投資編」を担当し、基本的な知識や銘柄の見方・考え方・心構えなどを解説しています。
投資の目的と方法が違う。
- 勝つ投資:市場平均を上回る投資成果を得ることを目指す投資。
- 負けない投資:市場平均に連動する投資成果を得ることを目指す投資。
著者:小松原周さんのプロフィール
小松原周さんは、大手資産運用会社のファンドマネージャー・アナリストを務める機関投資家で、TOPIXなどの指標に対して不敗の実績を誇っていて、投機家と投資家の違いについて言及しています。
負けない投資編:要約
本書を読めば、市場平均のリターンを得る投資方法を身につけることができるでしょう。
キャッチコピーをつけるなら『TOPIXにも負けない!市場平均を得る投資の本質!【負けない投資編】』です。
第1章:株式投資の基本
本章では、株式投資の基本的な知識や考え方について解説します。
株式投資で負けないためには、この4つのポイントの理解が重要です。
- 株式とは何かを知る。
- 投機と投資の違いを知る。
- リスクとリターンのバランス感覚を磨く。
- 株価が何からできているかを知る。
ポイント1.株式とは何かを知る。
そもそも株式とは、企業の資本の一部を表す証券のことで、株式を持つことは、企業の所有者の一人になることを意味します。
株式を持つことによって、このような権利や利益が得られます。
- 配当の受取権。
- 株主総会への参加権。
- 株式の売買による利益。
投資家は、自分の資金を使って、これらの権利や利益を得るために株式を買います。
そこで注意するポイントはこの3つ。
- 投資する対象や方法を選ぶ。
- 投資にかける時間や資金・リスク許容度などを考える。
- 投資の目的や目標を明確にする。
これらができて投資家と呼べます。
ポイント2.「投機」と「投資」の違いを知る。
「投機」と「投資」の違いは、短期的な価格変動による利益か、長期的な価値向上による利益のどちらを求めるかです。
- 短期的な価格変動による利益を狙う。
- 株式の本質的な価値や企業の業績は無関係。
- マーケットの心理やトレンドに従って売買を繰り返す。
- レバレッジや信用取引などを利用する。
- ハイリスク・ハイリターン。
- 長期的な価値向上による利益を狙う。
- 株式の本質的な価値や企業の業績に注目する。
- 自分の判断や信念に基づいて売買を行う。
- ローリスク・ミドルリターン。
投機は、短期的な価格変動によって利益を得ることを目的とし、株式の本質的な価値や企業の業績などは関係ありません。
マーケットの心理やトレンドに従って売買を繰り返し、高いリスクと高いリターンを求め、レバレッジや信用取引などを利用することが多いです。
一方、投資は、長期的な価値向上によって利益を得ることを目的とし、株式の本質的な価値や企業の業績などに注目し、自分の判断や信念に基づいて売買を行います。
低いリスクと適正なリターンを求め、レバレッジや信用取引などを利用することは少ないです。
投機はたんなるギャンブルです。投資としっかり区別しましょう。
ポイント3.リスクとリターンのバランス感覚を磨く。
リスクとリターンのバランス感覚は、自分にとって最適な投資判断をするために必要です。
この感覚を磨くために、まずはリスクとリターンの関係を知りましょう。
一般的に、リスクとリターンは正の相関があります。
リスクが高い投資は、リターンも高くなる可能性がある反面、損失も大きくなる可能性があります。
逆に、リスクが低い投資は、リターンも低くなる可能性がある反面、損失も小さくなる可能性があります。
ハイリスクはハイリターンですし、ローリスクはローリターンというわけです。
次に、自分のリスク許容度を知りましょう。
リスク許容度は、投資によって生じる損失に対してどれだけ耐えられるかです。
これは、個人の性格や資産状況、投資目的や期間などによって異なります。
リスク許容度を知ることで、自分にとって快適な投資スタイルを見つけられるでしょう。
そして、自分のリスク許容度を知ったら、リスクとリターンのバランスをとりましょう。
バランスをとるには、投資する銘柄や金融商品の特徴やリスク要因を把握し、適切な分散投資や資産配分を行うことが重要です。
自分が理解できない商品には手を出さないようにしましょう。
ポイント4.株価が何からできているかを知る。
株価の変動についても、根本的なところから知っておきましょう。
株価は、株式市場における需給のバランスでできています。
需給のバランスは、株式を買いたい人と売りたい人の数や意思の強さの関係のことです。
このバランスが変わると、株価も変わります。
株式を買いたい人が多く、売りたい人が少ないときは、株価は上昇し、逆に、株式を買いたい人が少なく、売りたい人が多いときは、株価は下落します。
需給のバランスが変わる原因としては、このようなものがあります。
- 企業の業績や財務状況の変化。
- 企業の経営方針や戦略の変化。
- 企業の関連ニュースや噂の流れ。
- マーケットのトレンドやセクターの動向。
- 経済や政治の状況や政策の変化。
- 投資家の心理や感情の変化。
しかし、需給のバランスによる株価の変動は短期的な要因でしかありません。
本質的な価値は、理論株価を見て判断しましょう。
理論株価とは、企業の将来の利益やキャッシュフローを現在価値に割り引いたものです。
理論株価は簡単に計算できます。
必要なパラメータはこの3つ。
- EPS:企業の1株当たりの利益
- g:企業の成長率
- PER:企業の利益に対する株価の割合
これらを、この式に当てはめて計算します。
理論株価 = EPS × (1 + g) × PER
未来を予測することは難しいですが、過去の数値を『IR BANK』などで確認し、推測することならできます。
第2章:銘柄の選び方
本章では、銘柄選びのポイントについて解説します。
銘柄選びはこの4つのステップを踏みましょう。
- メガトレンドを探す。
- 投資する会社を探す。
- 成長する会社を探す。
- より詳細に調査する。
ステップ1.メガトレンドを探す。
メガトレンドとは、長期的に社会や経済に大きな影響を与える変化や動きのことです。
メガトレンドに沿った企業や業界は、将来的に成長する可能性が高いです。
メガトレンドを探す方法は、このようなものがあります。
- 世界の政治や経済の動向を分析する。
例:地球温暖化やエネルギー問題など。 - 新しい技術やイノベーションに注目する。
例:AIやIoTなど。 - 消費者のニーズや思考の変化に対応する。
例:シェアリングエコノミーなど。
トレンドは好奇心があればつかめます。
自分の興味や関心を幅広く持ち、世の中のあらゆる情報に目を向ければ、将来的に成長する可能性のある企業や業界を見つけられるでしょう。
情報源としては、このようなものがあります。
- インターネットなどのメディア。
例:ビジネス書や経済誌など。 - 専門家などの意見。
例:家族や友人・同僚など。 - 実体験・現場。
例:会社の展示会やセミナーなど。
自分で体験するのが、一番実感が湧きやすいかも?
ステップ2.投資する会社を探す。
次に、メガトレンドに乗って成長する可能性の高い会社を見極めましょう。
成長する会社を見極めるポイントはこの3つ。
- 社長のビジョン。
- 組織の風土。
- ビジネス内容。
ポイント1.社長のビジョン。
投資したくなる社長の特徴は、このとおりです。
- 会社に対して情熱を持っている。
- 会社の強みなどを把握している。
- 会社のビジョンを明確に伝えることができる。
- ステークホルダーと良好な関係を築くことができる。
- 業績に対して責任感を持っている。
口コミや評判は検索すれば見つかります。
ポイント2.組織。
投資したくなる組織の特徴は、このとおりです。
- ビジョンに共感し、目標に向かって一丸となっている。
- 会社の方針に沿って自律的に行動している。
- 成果や評価に応じて、公平に報酬が与えられている。
- 新しいアイデアや挑戦を促進し、失敗を恐れない。
- オープンな会社あり、意見が自由に交換されている。
組織については、各社のホームページを参照してください。
ポイント3.ビジネス内容。
投資したくなるビジネスは、このとおりです。
- 市場のニーズに合致し、顧客の満足度が高い。
- 他社との優位性が明確であり、競争に打ち勝つことができる。
- 高い利益率を生み出し、安定的なキャッシュフローを確保できる。
- 新しい市場や顧客層に展開し、成長の余地がある。
お客さんからの評判が一番参考になるかも?
ステップ3.成長する会社を探す。
次に、投資したい会社の中から、株価が割安であり、将来的に上昇する見込みのある銘柄を探しましょう。
成長する会社を探す方法は、このとおりです。
- 自分の日常生活や仕事、趣味などからヒントを得る。
例:自分が使っている商品やサービスなどから、注目すべき企業や業界を探す。 - メディアやインターネットなどの情報源を活用する。
例:SNSやブログなどで、最新のニュースやトレンドなどをチェックする。 - 他の投資家や専門家などの意見や見方を参考にする。
例:株式投資の本や雑誌・コミュニティやフォーラムなどで、成功した投資家からのアドバイスを聞く。
これらの情報につねにアンテナを張っておきましょう。
ステップ4.より詳細に調査する。
最後に、投資アイデアを発見した銘柄を、さらに深く調べましょう。
その企業や業界の実態や将来性を検証するのです。
調査する方法は、このとおりです。
- 財務諸表や有価証券報告書などの公式資料を分析する。
- 決算説明会や株主総会・インタビューなどの発言を確認する。
- 商品やサービスの内容や特徴・実績や評判を調べる。
どんな情報を確認すればいいか、成長する会社の特徴を解説します。
成長する会社の特徴は、このとおりです。
- 会社の売上や利益・キャッシュフローなどの財務指標が、過去に比べて高い水準にあり、安定的に成長している。
- 会社のROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)などの収益性指標が、業界平均よりも高く、資本効率が良い。
- 会社のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの評価指標が、業界平均よりも低く、割安である。
- 会社の配当や自社株買いなどの株主還元策が、過去に比べて増加しており、株主に対する姿勢が良い。
- 会社の事業や商品・サービスが、市場のニーズやトレンドに合致し、顧客の満足度やロイヤリティが高い。
- 会社の事業や商品・サービスが、他社との差別化や優位性が明確であり、競争に打ち勝つことができる。
- 会社の事業や商品・サービスが、新しい市場や顧客層に展開できる可能性があり、成長の余地がある。
このように、成長する会社の特徴は、会社の業績や株価が今後も上昇する可能性が高いことを示しています。
売上の推移など、会社の業績は『IR BANK』が確認しやすいです。
第3章:ポートフォリオの組み方
本章では、まず、ポートフォリオの組み方について解説します。
ポートフォリオとは、投資家が保有する資産の組み合わせのことであり、ポートフォリオを組む目的は、リスクとリターンのバランスを最適化することです。
単一の資産に投資するよりも、複数の資産に分散して投資する方が、リスクを低く抑えながらリターンを高められます。
これは、資産間の相関という概念に基づいています。
ポートフォリオには、相関の低い資産を組み合わせることが望ましいです。
なぜなら、相関の低い資産は、互いにリスクを打ち消し合う効果があるからです。
例えば、株式と債券は相関が低いです。
株式が下落するときは、債券が上昇することが多いです。
そのため、株式と債券を混ぜてポートフォリオを作ると、株式の下落による損失を債券の上昇による利益で相殺することができます。
しかし、この相関は常に一定というわけではありません。
時には、相関の低い資産が同じ方向に動くこともあります。
例えば、2008年のリーマン・ショックのときは、株式と債券の両方が下落しました。
ポートフォリオのリスクを低減するには、相関だけでなく、資産の特性や市場の状況も考慮し、そのうえで自分に合ったポートフォリオを組みましょう。
最も重要なことは、自分の目的や目標・性格や嗜好・資金や期間などを考慮することです。
他人のポートフォリオを真似するのではなく、自分のニーズに合わせてカスタマイズする必要があります。
自分に合ったポートフォリオを組むには、こんな手順を踏みましょう。
手順1.投資目的や目標を明確にする。
投資目的は、投資をする理由や動機です。
例えば、老後の資金や子供の教育費、自分の夢や趣味などです。
投資目標とは、投資をすることで達成したい具体的な数値や期限です。
例えば、10年後に1億円を貯める、5年後に家を買う、毎年5%のリターンを得るなどです。
手順2.リスク許容度やリターン要求度を把握する。
リスク許容度とは、投資によって損失を出す可能性に対してどれだけ耐えられるかということです。
リターン要求度とは、投資によって得たい利益の水準や割合です。
リスク許容度やリターン要求度は、自分の年齢や収入・資産・家族構成・性格などによって異なります。
一般的に、若くて収入や資産が多く、家族の負担が少なく、積極的な性格の人は、リスク許容度やリターン要求度が高いと言えます。
手順3.資金や期間を決める。
資金は、投資に使えるお金です。
これは、自分の収入や支出・貯蓄などから算出しましょう。
このとき、自分の生活に影響を与えない範囲で決めることが大切です。
期間は、投資を始めてから終わるまでの時間です。
これは、自分の投資目標やリターン要求度に応じて決めましょう。
手順4.自分に合う資産を組み合わせる。
資産は、株式や債券・不動産・金などの投資対象のことで、それぞれに特徴やリスクやリターンがあります。
- 株式:リスクが高いですが、リターンも高い。
- 債券:リスクが低いですが、リターンも低い。
- 不動産:リスクは中程度ですが、リターンは安定的。
- 金:リスクは低いですが、リターンは不安定。
どんなポートフォリオにしようか、考えているときが一番楽しいですよね♪
負けない投資編:まとめ
- 株式投資とは、企業の資本を買い、企業の所有者になること。
- 投資と投機を区別し、リスクとリターンのバランスをとる。
- メガトレンドには逆らわない。
- メガトレンドの企業を分析し、投資する企業を探す。
- 自分の目標に合ったポートフォリオを組む。
以上、負けない投資家になるには、常に勉強と実践が必要です。
判断には責任を持ち、感情に振り回されないよう感情コントロールを身につけましょう。
投資はお金を増やす手段であり、その価値は人生の価値よりも低いです。
お金の意味や目的をはっきりさせ、本当に重要なものや幸せを見つけましょう。
初版から8年以上が経ち、新型感染症を経験した中で、「変化した人々の心理、変わらなかった投資の本質」をまとめた新章も追加されているので、ぜひ読んでみてください。
本記事の内容は、youtubeでも視聴することができます。
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