今回は『転換の時代を生き抜く投資の教科書』について解説します。
著者:後藤達也さんのプロフィール
著者の後藤達也さんは、2004年に日本経済新聞社に入社し、金融市場や金融政策・日銀・財務省などを取材。
2016年から2017年にはコロンビア大学ビジネススクール客員研究員、2019年から2021年にはニューヨーク特派員として勤務。
2022年に日本経済新聞社を退職し、フリージャーナリストとして活動しています。
YouTubeやTwitterなどでも経済情報を発信し、多くのファンを獲得しています。
時代の転換を生き抜く投資の教科書:要約
本書は、読者のフィードバックをもとに修正を重ねるという、異例の編集プロセスを経た、読者目線の「投資の教科書」です。
これまで投資に興味がなかった人にも、わかりやすく、偏りなく、お金だけではなく、経済や社会の変化に対する教養やスキルも身につくように書かれています。
本書を読めば、投資に関する最新の知識や情報をわかりやすく学び、自分の目標や性格に合った投資方法を見つけることができるでしょう。
キャッチコピーをつけるなら『【悲報】投資しない人全員貧乏確定!』です。
- 投資の必要性。
- 株式投資の基礎知識。
- 株価の動向を見る3つの視点。
- 中央銀行の役割。
- 後藤さんの投資法。
第1章:投資が欠かせない時代に入った
本章では、投資が欠かせない時代に入った理由や、その背景を解説します。
今はお金の価値がどんどん下がってしまう時代になってしまいました。
例えば、マクドナルドでビッグマックを食べたいと思ったとしましょう。
しかしビッグマックは、2018年には390円(税込)だった価格が、2022年には410円に、2023年には450円と、5年間で約15%も値上がりしました。
出典:ねとらぼ
これは、円安などの影響で、輸入品の価格が上昇したことが原因です。
円安とは、日本円の価値が外国の通貨に比べて下がることです。
円安は、輸出企業にとっては有利だけど、輸入品の価格は上昇します。
日本は多くの輸入に頼っているため、必然的にモノの値段が高くなってしまうのです。
この現象をインフレといいます。
インフレは、お金の価値が下がり、物価が上昇することです。
本来は経済が活性化するときに起こるけど、現在の日本のインフレは原材料費が上がるコストプッシュ型で、悪性のインフレといえます。
所得の伸びが追いつかず、実質的な購買力が低下してしまっているのです。
この、インフレに対抗するにはどうすればいいのでしょうか?
その答えが投資です。
投資は、お金を使って、将来的にお金を増やす行為です。
投資をすると、お金が働いてくれます。
長期的には、複利効果で資産を増やせるのです。
複利効果とは、利息が利息を生むことです。
例えば、10万円を年利5%で投資したとしましょう。
それは1年後には、10万5千円になります。
このとき、5千円が利息です。
2年後には、11万250円になり、利息は750円になります。
このように、利息が利息を生むことで、資産が増えていくのです。
投資をすると、インフレの値上がり分をカバーできるし、将来のリタイアメント資金も備えられます。
これからもインフレは続くでしょうし、未来に備えて投資を始めましょう。
- インフレに抵抗するため。
- 安心して老後を暮らすため。
第2章:株・会社・決算……そもそもから考え直してみよう
本章では、株式市場や会社の決算の基礎知識を解説します。
株式
株式とは、会社の一部の所有権を表す証券です。
株式を保有すると、配当や株主優待などの利益や、株主総会での発言権や議決権などの権利が得られます。
上場させた会社は、資金調達や知名度向上・株式報酬などのメリットが得られる一方、開示義務や株主の監視、株価の変動などのデメリットもあります。
投資家は、上場している株式は市場で自由に売買できます。
ただし価格は需給や業績などによって変動するから売買には注意が必要です。
株価は「現在ではなく未来」を見て決まります。
会社の現在の業績や資産だけでなく、将来の成長性や収益性などにも左右されます。
市場の参加者が会社の将来に対する期待や不安・会社の業績予想や分析レポート・ニュースや噂など、様々な情報によって日々変化します。
株式:会社の一部の所有権を表す証券。
上場株式は市場で自由に売買できる。
株価は成長性や収益性、短期的には需給で動く。
バランスシート(貸借対照表)
ぶれない投資をするためには、まずはバランスシート(貸借対照表)を読めるようになりましょう。
バランスシートは、会社の資産や負債、純資産などを一定の時点で表した財務諸表で、会社の財務状態や資金繰り、収益力などを分析するのに役立ちます。
バランスシートには、資産・負債・純資産の3つの要素があり、資産は会社が持つ財産で、負債は会社が支払うべき債務で、純資産は会社の自己資本です。
会社にとっての家計簿みたいなものです。
- 会社の資産や負債、純資産を表した財務諸表。
- 資産:資産は会社が持つ財産。
- 負債:会社が支払うべき債務。
- 純資産:会社の自己資本。
例えば、トヨタ自動車と任天堂のバランスシートを比べてみましょう。
するとこんな特徴が見えてきます。
トヨタ自動車は資産が約83兆円、負債が約50兆円、純資産が約33兆円。
資産の約4割が有形固定資産で、工場や設備などの物理的な財産が多いです。
一方、負債の約半分が長期借入金で、資産の拡大に伴って借金も増えています。
また、純資産の9割以上が利益剰余金で、過去の利益を積み上げているとわかります。
任天堂は資産が約3.2兆円、負債が約0.7兆円、純資産が約2.5兆円。
資産の約8割が現金や預金で、流動性の高い財産が多いです。
一方、負債の約4割が未払費用で、ゲームソフトの開発費などの支払いを先延ばしにしています。
財務が読めるようになるためには、簿記を勉強するのが一番です。
第3章:株価はなにで動くのか
本章では、株価の動きに影響を与える様々な要素を解説します。
財務を見る以外にも、株価を分析するには、会社の個別の状況や業界の動向・国や地域の経済や政治など、様々な視点が必要になります。
それらの視点は大きく3つ挙げられます。
- 虫の目:会社の業績や財務・戦略などを詳細に調べる視点。
- 鳥の目:マクロ経済や金融政策・世界情勢などを広く見渡す視点。
- 魚の目:市場の参加者の心理や行動・需給や流動性などを把握する視点。
1.「虫の目」
虫の目は、会社の業績や財務・戦略などを詳細に調べる視点です。
この視点で最も使われるモノサシは、PERです。
PERは、株価を1株当たりの利益で割った数値で、株価の割高や割安を判断する指標の一つです。
株価が将来の利益に対してどれだけの期待を込めているかを示していて、PERが高いほど株価は利益に対して割高であり、成長性が高いと判断できます。
PERは、同じ業界や市場の平均値と比較することで、相対的な評価もできます。
例えば、通信セクターだと、NTTとKDDIとソフトバンクを比べましょう。
出典:IR BANK
PERは業績や景気の変動によって大きく変わることがあるため、その点だけ注意しましょう。
2.「鳥の目」
鳥の目は、マクロ経済や金融政策・世界情勢などを広く見渡す視点です。
マクロ経済とは、国や地域の経済全体の動きを分析する学問です。
GDPやインフレ率、失業率などの経済指標を用いて、経済の成長や安定を測ります。
マクロ経済の状況は、株価に大きな影響を与えます。
経済が拡大すれば、企業の収益も増え、株価も上昇するけど、逆に縮小すれば、企業の収益も減り、株価も下落します。
マクロ経済の状況を知るための重要な指標として、米雇用統計があります。
米雇用統計は、毎月初めに発表されるアメリカの労働市場の状況を示す統計で、非農業部門の雇用者数の増減や、失業率・平均時給などの指標が含まれます。
アメリカの経済の健康度や、金融政策の方向性を判断するのに重要な役割を果たしていて、良好な雇用統計は、経済の活性化やインフレの加速を示し、金利の上昇や株価の下落を引き起こしたりします。
日本に投資するとしても、アメリカは世界一の経済大国であり、その動向は無視できません。
世界中が繋がっているからこそ、鳥の目の視点が重要になってくるのです。
3.「魚の目」
魚の目は、市場の参加者の心理や行動・需給や流動性などを把握する視点です。
鳥の目は高い視点ですが、こちらは近視眼的な視点と言えます。
例えば、需給は、市場での商品やサービスの需要と供給の関係を表す言葉で、価格に直接的な影響を与えます。
需要が供給を上回れば、価格は上昇するし、供給が需要を上回れば、価格は下落します。
同じように株価も、株式の需給によって決まります。
株式の買い注文が売り注文を上回れば、株価は上昇するし、株式の売り注文が買い注文を上回れば、株価は下落します。
短期的には、株価は需要と供給のバランスでも動いてしまうのです。
健全に成長している企業だとしても、短期的には株価が下落することもあるのです。
外国人投資家
日本株のメインプレーヤーは「外国人投資家」です。
外国人投資家は、日本の株式市場に参加する海外の個人や機関の投資家のことで、日本株の需給や価格に大きな影響力を持っています。
外国人投資家の買い越しや売り越しは、日本株の上昇や下落につながることが多いです。
最近の株高も、主に外国人投資家による買いが大きな要因となっています。
出典:投資主体別売買動向(投資部門別売買状況) 日経平均比較チャート (nikkei225jp.com)
外国人投資家の動向は、為替レートや世界経済の状況、日本の政治や金融政策などによって変化します。
外国人投資家は、円安や日本経済の回復、日銀の金融緩和などを好み、円高や日本経済の減速、日銀の金融引き締めなどを嫌います。
- 日本の株式市場に参加する海外の個人や機関の投資家。
- 日本株の需給や価格に大きな影響力を持っている。
- 日銀の金融引き締めなどを嫌う。
第4章:中央銀行は金融市場の心臓
本章では、中央銀行の金融政策の仕組みや役割を解説します。
日本の中央銀行は日本銀行(日銀)で、アメリカは連邦準備制度(FRB)です。
日銀は、金利やマネーサプライなどを調整することで、物価の安定や経済の成長を目指す金融政策を行っています。
では、なぜ日銀は、物価の安定や経済の成長を目指すのでしょうか?
それは、物価の安定や経済の成長が、日本の幸せにつながるからです。
中央銀行は、物価の安定を目指すために、インフレーションターゲットという政策目標を設定しています。
インフレーションターゲットとは、中央銀行が公表する、物価の上昇率の目標値です。
インフレーションターゲットは、市場や国民に対して、中央銀行の金融政策の方向性や姿勢を示すことで、物価の安定の実現を目的としています。
物価の安定は、経済の活性化や雇用の増加、所得の分配などにも好影響を及ぼします。
物価の安定があれば、消費者や企業は、将来の物価や所得の見通しを立てやすくなります。
これは、消費や投資の意欲を高めることになります。
消費や投資が増えれば、経済が成長し、雇用が増え、所得が増え、生活水準や幸福度が向上するというわけです。
需要に応えて適度に物の価値が上がっていくのであれば、本来インフレは悪いことではないのです。
これはディマンドプル・インフレという状態です。
日本のインフレーションターゲットは2%です。
日本銀行は、2023年4月に総裁に就任した植田良氏が率いていますが、植田日銀も、前任の黒田日銀が続けてきた異次元の金融緩和を引き継ぎ、物価目標の2%を達成することを目指しています。
コロナ禍での経済対策として、無制限の国債買い入れや企業向けの資金供給などを行っていますし、金融緩和の副作用や持続可能性にも配慮し、金融政策の柔軟性や効率性を高めることを表明しています。
ただ、日本の物価は、日銀の政策とは無関係に、原材料コストの上昇によって、デフレからインフレに転じてしまいました。
このコストプッシュ・インフレは、決していいインフレではありません。
今後どうやって物価の安定を目指し、適正なインフレに持っていくのか、植田日銀の手腕が問われます。
- インフレーションターゲット:中央銀行が公表する、物価の上昇率の目標値。
- コストプッシュインフレ:生産コストの上昇によって物価が引き上げられるインフレ。
- ディマンドプルインフレ:需要の増加によって物価が押し上げられるインフレ。
第5章:投資をはじめよう
本章では投資を始める際に注意すべきことや、後藤さん自身の投資スタイルを解説します。
まず、投資をする際に一番大切なことは、自分の目標や性格に合った投資方法を選ぶことです。
投資は、リスクとリターンのトレードオフです。
リスクが高いほどリターンも高くなりますが、失敗すれば損失も大きくなります。
投資には、自分の資金や時間・知識などの制約もあり、自分の状況に応じて、適切な投資商品や手法を選びましょう。
そして初めは少額から投資し、値動きに慣れましょう。
投資には、自分の感情や心理も影響します。
市場の動きに一喜一憂せず、冷静に判断することが大切です。
後藤さんの投資法
後藤さんの投資は、主に日本株と米国株の長期保有で、自分の興味や関心のある業界や企業に投資しています。
例えば、ゲームやインターネット・テクノロジーなどの分野です。
企業の業績や財務・戦略などを分析し、将来の成長性や収益性を見極めています。
また、株価の割安や割高も考慮しています。
売買はあまり頻繁に行わず、株価の変動に動じないように、自分の判断に自信を持っています。
しっかり分析されているからこその自信なのでしょう。
個人投資家はどうすれば良いか?
やはり長期で投資した方が良いです。
長期的には、株式は経済や企業の成長に連動し、他の資産よりも高いリターンをもたらしてくれます。
長期投資は機関投資家よりも個人投資家のほうが有利です。
個人は、機関と違って、短期的な業績や評価に縛られない自由度があるからです。
投資信託
投資信託は、プロの運用者が多数の投資家から集めた資金を、株式や債券などに分散投資する商品です。
投資信託は手数料がかかります。
もし買う場合は、できるだけ手数料が安い商品を選びましょう。
投資信託の手数料は、投資信託のリターンに直接的な影響を与えます。
手数料が高いほど、投資信託のリターンは低くなります。
投資信託の手数料は、投資信託の品質や性能を表すものではなく、手数料の高い投信が、いい投信とは限りません。
おすすめの投資信託としては、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)が挙げられます。
スケールメリットを活かした投資信託で手数料は0.05775%と世界最安水準です。
世界中の優良企業に分散投資されているから初心者でも安心して保有できるでしょう。
海外への投資
海外に投資をするなら、為替にも意識を持つ必要があります
為替とは、外国の通貨と自国の通貨の交換比率のことです。
為替レートは、市場の需給や経済や政治の状況などによって変動します。
海外に投資をするときは、外国の通貨で購入し、自国の通貨で売却します。
その際、為替レートの変化によって、投資のリターンに影響が出ます。
今は円安傾向なのでリターンが大きくなるかもしれませんね。
時代の転換を生き抜く投資の教科書:まとめ
- インフレが本格化し、お金の価値が目減りする時代になった。
- 株式投資を始めるまえに基本的な知識を身につける。
- 経済の流れを知るために『虫の目』『鳥の目』『魚の目』の視点を持つ。
- 中央銀行(日銀・FRB)の動向に注目する。
- インフレに抵抗し、安心して老後を迎えるために投資を始めよう。
以上、株式投資の必要性と基礎知識を解説したけれど、後藤さんの解説のほうがはるかにわかりやすいと思うので、ぜひ読んでください。
図解も使って投資初心者でもわかりやすく解説されています。
本動画の内容は、youtubeでも視聴することができます。
コメント