今回は、広木隆さんの『キャリア30年超のマーケットのプロが教える 利回り5%配当生活』について解説します。
著:広木隆さんのプロフィール
広木隆さんは、マネックス証券株式会社の専門役員であり、チーフ・ストラテジストとしても知られています。
『ニュースモーニングサテライト』や『日経プラス9』などで、コメンテーターを務めるなど、メディアにも出演しています。
本書では、特に『脱・デフレ』の日本経済において、個人投資家がどのように対応すべきか、そして、高配当株を中心とした投資戦略を、どのように立てるべきかに焦点を当てています。
また、日経平均が将来的に4万円を超えるという強気な予測も立てており、その根拠となる経済的条件や推奨銘柄についても解説しています。
本書の発売は、2024年2月19日ですが、実際に日経平均は、3月に4万円を超えましたね。
- 日経平均が4万円を超える根拠。
- 資産運用に日本の高配当株を勧める理由。
- 高配当株投資のポイント。
- 銘柄の売買タイミングとリスクコントロール。
- オススメの高配当株厳選10銘柄。
- 新NISAの成長投資枠で作るポートフォリオの例。
この記事を読めば、長期的な安定収益を実現するための、高配当株投資の知識と戦略を身につけることができるでしょう。
キャッチコピーをつけるなら『新NISAで非課税配当生活!』です。
第1話:日経平均が4万円を超える根拠
まず、今後日経平均が4万円を超えていく2つの根拠について解説します。
『株価は右肩上がりに上昇するものだ』と理解している若い世代が増えている
アベノミクス以降、日経平均は右肩上がりを続けています。
そのため、この10年内で株式投資を始めた人たちは、投資に対してネガティブなイメージを持っていないのです。
したがって、もし株価が下がってもそこで買い行動が起こるため、ますます株価が底堅くなっているのです。
バブル崩壊やリーマンショックを経験した人たちとは、マインドが全然異なるのですね。
『デフレからインフレへ』移行している
日本はここ数年、デフレから脱却し、インフレに向かっています。
デフレは、モノの価値が下がり、お金の価値が上がる状態です。
この状態だと、モノの価値が下がるので、相対的にお金を預金のまま置いておいても価値が保たれていました。
しかしインフレは、モノの価値が上がり、お金の価値が下がる状態です。
ただ銀行に預けておくだけだと、相対的にお金の価値が下がってしまいます。
インフレになると、今度はインフレを抑えようと金利を上げるのが一般的です。
実際、2024年3月19日に、日銀がマイナス金利政策を解除し、17年ぶりに利上げを決定しましたね。
メガバンク等、大手銀行も預金金利を引き上げています。
しかし、それでも低金利であることに変わりありません。
金利を上げすぎるとデフレに戻りかねないため、まだまだ低金利は続くと予測されます。
物価の上昇にまったく追いつかないわけですね。
銀行預金だけでは、資産が保てないどころか目減りしてしまいます。
インフレに耐えられるよう、銀行以外の資産の置き場所を考えなくてはいけないのです。
第2話:資産運用に日本の高配当株を勧める理由
では、銀行以外のどこに資産を置けばよいのでしょう。
一般的に、株式や不動産、金などのコモディティがインフレに強い資産だと言われています。
金(ゴールド)
金自体がモノなので、インフレが起きれば当然価値が上昇します。
しかし、金は、株式の配当や、債券の利子のようなインカムゲインはまったく発生しません。
不動産
不動産もインフレが起きれば土地の価格が上昇します。
しかし、値上がりする立地は限られていますし、アパート経営などは災害リスクなども発生します。
投資するにしても資金が何千万円と必要になりますね。
不動産に投資するのであれば、現物ではなく、J-REIT(不動産投資信託)に投資しましょう。
J-REITであれば、1口数万円から購入することができ、高い分配金を受け取ることができます。
株式
株式は最もインフレに強い資産と言われています。
モノの価値が上がれば、企業の売上や利益が押し上げられるため、株価も上昇するからです。
ネット証券などでは、1株から買える仕組みもあり、数百円から購入できるため、個人でも投資しやすいです。
高配当株とJ-REITがオススメ
高配当株とJ-REITであれば、キャピタルゲインとインカムゲインの両方を狙えます。
キャピタルゲインは、値下がりによって得られなくなる可能性がありますが、インカムゲインである配当金や分配金は、権利付き最終売買日に保有していれば、確実に受け取ることができます。
含み益になっていれば売却し、含み損になっていれば保有し続け、配当金などをもらえば良いですね。
ですが、株式であれば、日本ではなく、米国の方が良いのではないでしょうか?
日本の株式市場は、東証からのPBRの改善要求などに応え、配当を重視する傾向が高まっています。
チャイナリスクもあり、アジアへの投資資金の受け皿として日本が選ばれてもいます。
インフレになり始めたとはいえ、外国から見ればまだまだ日本は割安なのです。
第3話:高配当株投資のポイント
ここでは、日本の高配当株やJリートに投資するとして、何をどんなふうに買えば良いか、ポイントを5つ解説します。
連続増配銘柄に投資する
連続増配とは、毎年配当金が継続して増えていくことを指します。
長期的に業績を伸ばしている会社でなければ連続増配はできないため、継続的な増配は優良企業であることの証明ともいえます。
無配や減配になりにくいので、安心して保有できますね。
日経平均高配当株50指数に連動したETFを買う
具体的には、(1489)NEXT FUNDS日経平均高配当株50指数連動型上場投信になります。
ETFは、上場投資信託のことで、株式のように証券取引所でリアルタイムで売買が可能な投資信託の一種です。
日経平均株価やトピックスなどの指数に連動するように運用されることが多く、一つのETFで複数の資産に投資することができます。
また、運用コストが低く、保有している資産が明確で、価格もリアルタイムでわかるのが特徴です。
自分で銘柄分析などをせずに済むので、投資を始めやすいです。
個別銘柄を買う場合は10~30銘柄に分散投資する
ETFは楽ですが、利回りが物足りないと感じる人もいるでしょう。
そういう人は、個別の高配当銘柄で自分だけのポートフォリオを作る必要があります。
その際の銘柄数は10~30を目安にしましょう。
多すぎるとETFを買った方が良いということになりますし、少なすぎると分散効果が薄れ、リスクが高まります。
多すぎると銘柄分析も大変ですよね。
J-REITは格付けの高さを確認する
J-REITは、値上がりを積極的に狙う資産ではなく、分配金を生活費に充てるなど、キャッシュフローを改善させたい人に向いています。
このとき重要なのは、分配金の支払い能力の保証です。
このJ-REITの信用力を確認するには、長期発行体格付けが参考になります。
具体的には、日本格付研究所(JCR)を参照してください。
長期発行体の信用格付けは、『AAA』から『D』までありますが、『A-』以上であれば問題ないと言えます。
多少利回りが劣っても、安全重視で長く受け取り続けたいですね。
新NISAの成長投資枠で買う
新NISAを活用すれば配当金や分配金を非課税で受け取ることができます。
たとえば、利回り5%の株式を、成長投資枠の年間の上限金額240万円分で買ったとすると、年間の配当金が12万円になります。
もしこれを特定口座で買った場合、12万円から約20%の税金、約2万4千円が引かれることになり、税引き後の利回りは、4%になってしまいます。
この差は大きいですね。
いかに税金が足を引っ張っているかが分かります。
まずは新NISAの成長投資枠で買い、まだ余力がある人は、次に特定口座という順番で買いましょう。
第4話:銘柄の売買タイミングとリスクコントロール
まず、銘柄の売買タイミングについてですが、これは極論いつ買ってもかまいません。
よく、下がったタイミングで買えと言われますが……。
キャピタルゲイン狙いの場合は、タイミングを読む必要があります。
しかし、インカムゲイン狙いであれば、目標の利回りを上回っていればタイミングを読む必要はありません。
株価が下がれば買い増せば良いですし、むしろ株価の上昇に乗り遅れることがリスクとなります。
余力があるのであれば、できるなら早めに一括投資することを、広木さんは勧めています。
とはいえ、買い増すための余力はある程度残しておいた方が良さそうですね。
次に、リスクコントロールについて、ポイントを4つ解説します。
減配や無配転落リスクのない銘柄を選ぶ
このリスクを避けるために『IR BANK』などで配当性向や過去の配当推移を確認しましょう。
セクターの分散を意識する
ここで言うセクターとは、業種のことです。
たとえば、自動車のような輸出企業と、石油や電力などの輸入企業を組み入れれば、為替変動の影響を抑えられるでしょう。
ポートフォリオに組み入れる銘柄の入れ替え候補を探しておく
ポートフォリオに組み入れた銘柄の中に、無配や減配リスクが生じた場合、その銘柄は除外しなくてはいけません。
利回りが下がってしまいますものね。
株価が上がり、キャピタルゲインを得たくなった場合も同様です。
業績が良く、利回りの高い銘柄は常に探し、監視しておきましょう。
利食いはできるだけ引っ張る
この方法を『トレーリング・ストップ』と言います。
トレーリング・ストップは、価格が有利な方向に動いた場合、ストップ注文(逆指値)も併せて一定幅ずつ有利な方向へスライドさせる注文方法です。
たとえば、それまでの最大儲け幅の20%までの押し目は許容する(売らずに我慢する)が、その20%を割り込んだら利食いする、といったルールを設けるのです。
株価が上昇した場合、キャピタルゲインを得たくなることもあるでしょうが、できるだけ我慢して利益を最大化させましょう。
損小利大というやつです。
第5話:オススメの高配当株厳選10銘柄
ここでは、広木さんオススメの31銘柄のうち、さらにUP主が厳選した10銘柄を紹介します。
ただし、情報は古くなっている可能性があります。
最終的な確認や売買判断は、ご自身で行ってください。
残りの21銘柄を知りたい人は、ぜひ本書をご覧ください。
(2914)JT
JTは、国内外でたばこ事業を展開する世界大手企業です。
加熱式たばこ製品「プルームX」の拡販に力を入れており、食品や医薬品事業も手掛けています。
高配当銘柄の代表格ですね。
たばこ事業は、国内は独占で、新興国でのニーズも高いです。
筆頭株主が財務大臣で、国策銘柄といえます。
業績面では、売上とEPSは横ばい。
PERは15.89倍と、平年より割高となっています。
配当金は1株当たり194円で、利回りは約4.76%です。
配当性向は、約71.4%で、2021年に減配があったものの、それ以外は増配傾向にあります。
株価チャートは、右肩上がり。
権利確定月は、6月と12月です。
(3470)マリモ地方創生リート
マリモ地方創生リートは、分譲マンション開発や市街地再開発を手掛ける株式会社マリモをスポンサーとしています。
地方の住宅・商業施設を主要な投資対象とし、全国に分散しています。
地方に分散されているので、災害時のリスクも軽減されます。
2023年12月31日時点で、保有物件数は52件、取得価格合計は501.40億円です。
稼働率は98.8%。
長期発行体格付はJCRから「A-」の安定的な格付を取得しています。
営業収益や資産は右肩上がりとなっています。
分配金も右肩上がりで、利回りは5.50%となっています。
株価チャートは横ばい。
ナブは0.92と、1倍を割れており、割安となっています。
権利確定月は6月と12月です。
(5192)三ツ星ベルト
三ツ星ベルトは、Vベルトやその他の伝動ベルトを製造販売する日本の大手企業です。
主に自動車用ベルトを中心に、産業機械用やOA機器用のベルトも手掛けており、建材の製造販売も行っています。
アクティビストからの提案で、配当性向が100%になりましたね。
業績面では、売上とEPSは緩やかな右肩上がり。
PERは19.65倍と、平年より割高となっています。
配当金は1株当たり250円で、利回りは約5.31%です。
配当性向は約100.4%で、2016年と2020年に減配があったように見えますが、これは特別配当と記念配当があったためです。
株価チャートは右肩上がり。
権利確定月は3月と9月です。
(6070)キャリアリンク
キャリアリンクは、官公庁関連や大手企業向けにビジネスプロセスの業務請負と人材派遣を行っている企業です。
最近では、食品加工分野への事業拡大も進めています。
BPOや派遣はこれからも伸びる分野です。
業績面では、売上は右肩上がりですが、EPSは大幅に減少しています。
PERは13.2倍と、平年並みとなっています。
配当金は1株当たり120円で、利回りは約5.09%です。
配当性向は約22.8%で、増配傾向を続けています。
株価チャートはレンジ相場。
権利確定月は3月のみの一括配当です。
(7272)ヤマハ発動機
ヤマハ発動機は、二輪車製造では世界の大手メーカーの一つであり、マリン事業が主要な収益源となっています。
また、産業ロボット分野の強化にも力を入れており、自動車大手のトヨタとの提携も行っています。
アジアを中心とした新興国での売り上げが順調で、インド市場にはこれから注力していくため、成長が期待できそうですね。
業績面では、売上とEPSは右肩上がり。
PERは7.76倍と、平年並みとなっています。
配当金は1株当たり50円で、利回りは約3.62%です。
配当性向は約29.5%で、2020年に減配があったものの、それ以外は増配傾向を続けています。
株価チャートは右肩上がり。
権利確定月は6月と12月です。
(8130)サンゲツ
サンゲツはインテリア業界の最大手で、壁紙市場では首位を占めています。
カーテンや床材も強みを持っており、専門人材の採用により空間デザインの能力を強化しています。
インテリアは生活に直結していて、地味でも堅実なビジネスですね。
業績面では、売上とEPSは右肩上がり。
PERは12.95倍と、平年より割安となっています。
配当金は1株当たり140円で、利回りは約4.35%です。
配当性向は約44.0%で、10年連続増配を続けています。
株価チャートは右肩上がり。
権利確定月は3月と9月です。
(8306)三菱UFJフィナンシャルグループ
三菱UFJフィナンシャルグループ、国内最大の民間金融グループであり、銀行・信託・証券・カード・リースなど幅広い金融サービスを提供しています。
特に、米州やアジアでの展開を進めており、グローバルな事業拡大を図っています。
銀行は金利上昇の恩恵を受けられますね。
業績面では、経常収益とEPSは右肩上がり。
PERは12.74倍と、平年より割高となっています。
配当金は1株当たり41円で、利回りは約2.73%です。
配当性向は約35.3%で、累進配当を宣言しており、増配傾向を続けています。
チャートは右肩上がり。
権利確定月は3月と9月です。
(8593)三菱HCキャピタル
三菱HCキャピタルは、三菱UFJグループの一員であり、2021年4月に日立キャピタルと統合されました。
この統合により、リース業界で首位級の地位を確立しており、M&Aを通じて海外展開を加速しています。
連続増配で有名な企業です。
売上高とEPSは、右肩上がり。
PERは12.03倍と、平年より割高となっています。
配当金は1株当たり37円で、利回りは約3.67%です。
配当性向は約40.8%で、累進配当を宣言しており、25年連続増配を続けています。
株価チャートは右肩上がり。
権利確定月は3月と9月です。
(8804)東京建物
東京建物は、旧安田系の総合不動産企業であり、賃貸ビルとマンションが主力事業です。
さらに、オフィスや物流などの収益物件開発を強化しています。
不動産はインフレとともに価値が上昇するので、今後期待できる業種ですね。
売上高とEPSは、右肩上がり。
PERは10.97倍と、平年よりやや割高となっています。
配当金は1株当たり79円で、利回りは約3.13%です。
配当性向は約33.8%で、11年連続増配を続けています。
株価チャートは右肩上がり。
権利確定月は6月と12月です。
(9432)NTT
NTTは、NTTグループの持株会社であり、ドコモを主力としています。
固定電話市場では独占的な地位を占め、光回線においても高いシェアを有しています。
また、海外での事業開拓と提携に力を入れていることが特徴です。
日本最大の通信会社なので、安定感が違います。
売上高とEPSは、右肩上がり。
PERは10.56倍と、平年並みとなっています。
配当金は1株当たり5円で、利回りは約2.98%です。
配当性向は約34.5%で、13年連続増配を続けています。
株価チャートは右肩上がり。
権利確定月は3月と9月です。
第6話:新NISAの成長投資枠で作るポートフォリオの例
ここでは、先に紹介した10銘柄に、新NISAの成長投資枠を利用して投資する場合の、ポートフォリオの作り方を紹介します。
- 新NISAの成長投資枠で買える年間最大金額、240万円の余力がある。
- 各株価と配当利回りは、2024年4月21日時点で計算。
- 100株単位で買えない場合は、単元未満株でも買う。
まず、本書のタイトル通り、利回りが5%になるようにポートフォリオを組んでみましょう。
すると、このような買い方になります。
配当金は希望通り12万円になりますが、投資金額にかなり差がありますね。
利回り5%を達成しようとすると、どうしても利回りの高い銘柄に集中しなくてはいけなくなります。
しかし、これはリスクを取りすぎだと感じる方も多いでしょう。
次に、10銘柄に対して、およそ24万円ずつ、均等に投資した場合を見てみましょう。
すると配当利回りは、約4.11%、配当金は約9万9千円になります。
これを目安に配分を考えた方が、リスクとリターンのバランスが取れるでしょう。
最後に、利回りだけでなく、企業の成長性や財務の健全性も考慮して、UP主ならこんなポートフォリオにするという参考例を示します。
大型株に比重を置いており、利回りが物足りないと感じるかもしれませんが、累進配当を宣言している企業は長期で保有し続ければ、今後の利回りの上昇が期待できます。
株の儲けは我慢料。
低いリスクで利回り5%も目指せそうですね。
利回り5%配当生活:まとめ
- インフレに対抗するには資産運用が必要になる。
- 日本の高配当株でインフレヘッジする。
- 増配傾向にある10から30銘柄に分散投資する。
- 新NISAを活用し、非課税で配当金などを受け取る。
- 無配・減配リスクを避け、セクターを分散する。
- 含み益はできるだけ利益を伸ばす。
オススメ銘柄とその利回りはこのとおり。
証券コード | 銘柄名 | 配当利回り |
2914 | JT | 4.76% |
3470 | マリモ地方創生リート | 5.50% |
5192 | 三ツ星ベルト | 5.31% |
6070 | キャリアリンク | 5.09% |
7272 | ヤマハ発動機 | 3.62% |
8130 | サンゲツ | 4.35% |
8306 | 三菱UFJフィナンシャルグループ | 2.73% |
8593 | 三菱HCキャピタル | 3.67% |
8804 | 東京建物 | 3.13% |
9432 | NTT | 2.98% |
あなたもオススメの高配当株があれば、ぜひコメントで教えてくださいね。
本記事の内容は、youtubeでも視聴することができます。
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