今回は、『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』について解説します。
本書は写真家の幡野広志さんが書いた写真エッセイです。
著者:幡野広志さんのプロフィール
幡野広志さんは、写真家やフォトグラファーとして活躍するだけでなく、ラジオパーソナリティやコラムニストとしても人気があります。
2010年から広告写真家の高崎勉さんに師事し、2011年に独立しました。
2017年に多発性骨髄腫という血液がんを発病し、余命3年を宣告されましたが、それでも、写真や文章を通して、自分の感情や思いを伝え続けています。
うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真:要約
本書では自分の写真を見直す方法や、被写体との距離感や光の使い方など、いい写真を撮るためのヒントがたくさん紹介されています。
写真は撮るだけならかんたんに撮れますが、うまく撮るとなると難しいですよね。
しかし、うまい写真が必ずしもいい写真とは限りません。
写真には「うまい」と「いい」の違いがあるのです。
技術的にうまく撮れていても、感動や伝えたいことがなければ、いい写真とは言えないのです。
逆に、技術的にヘタでも、心に響くものや自分の色が出ていれば、いい写真になります。
本書を読めば、写真の本質や感性を学び、自分なりの「いい写真」を撮るためのヒントやノウハウを得られるでしょう。
キャッチコピーをつけるなら『伝わる写真はヘタでも撮れる!』です。
第1章:うまい写真といい写真
本章では、いい写真とは何か、うまい写真とは何か、その違いにフォーカスしています。
先に述べたとおり、技術的にうまく撮れていても、伝わらなければいい写真とは言えません。
どうすれば伝わるいい写真が撮れるのか?
そのためには、こんな質問を自問すると良いです。
- この写真は何を伝えたいのか?
- この写真はどんな感情を持って撮ったのか?
- この写真はどんな人に見せたいのか?
- この写真はどんな場所に飾りたいのか?
これらに答えれば、自分の写真に対する価値観や目的が明確になり、いい写真に近づけられます。
第2章:写真を撮る理由
本章では、写真を撮る動機や目的にフォーカスしています。
写真を撮る理由は人それぞれです。
例えば、以下のように、いろいろな理由があるでしょう。
- 自分の思い出を残したい
- 自分の見たものを伝えたい
- 自分の感性を表現したい
写真を撮る理由を考えることで、写真の価値観や目的が明確になります。
自分がどんな写真を撮りたいのかも見えるでしょうし、写真を撮るときの気持ちや姿勢も変わるでしょう。
自分の感情や思いを写真に込めることが大切です。
第3章:写真の勉強
本章では、写真の本や教え方には間違いや誤解が多いと指摘しています。
例えば、三分割構図やルール・オブ・サードという構図の法則について、理論的な根拠がないのに、写真の本や教室で教えられていたりするけど、これらの法則は写真の本の中で生まれたものであり、プロの写真家やフォトグラファーは気にしていないそうです。
幡野さん、写真の基本やコツを学ぶには、写真以外のものからインスピレーションを得ることが大切だと言っています。
例えば、音楽や映画や本や絵画など、自分が好きなものや感動したものから、写真に活かせるものを見つけましょう。
写真は自分の感情や思いを伝える手段であり、自分の色や個性が必要なのです。
第4章:光と距離
本章では、写真において最も重要な要素である光と距離について、光の使い方や調整の仕方、被写体との適切な距離感や関係性の作り方などにフォーカスしています。
幡野さんは、光は写真の命だと言っています。
光の量や質や方向や色などによって、写真の雰囲気や表現力が大きく変わります。
そのため、光の種類や効果をわかりやすく説明し、光を調整する方法として、露出やホワイトバランスの設定や、フィルターやレフ板の使い方などを紹介しています。
また、距離は写真の心だとも言っています。
距離とは、撮影者と被写体との間の物理的な距離だけでなく、心理的な距離や関係性も含みます。
距離を適切にとることで、写真に感情や思いを込められるのです。
そのため、距離をとる方法として、レンズの焦点距離や画角の選び方や、被写体とのコミュニケーションの仕方などを紹介し、距離によって写真の見せ方や伝え方が変わることを、自分の写真や他の写真家の写真を例にして説明しています。
第5章:写真の誤解
本章では、写真に関する一般的な勘違いや思い込みにフォーカスしています。
例えば、ピントやボケなどについて、プロの写真家やフォトグラファーの見解と比較して説明しています。
幡野さんは、写真の本や教え方には、写真の本質や感性を無視した、表面的なテクニックやルールが多いと指摘しています。
それらは、写真を撮るときに邪魔になるだけでなく、写真の価値観や目的を曖昧にするとも言っています。
そして、写真に関する一般的な勘違いや思い込みの例として、これらを挙げています。
- ピントが合っている写真がいい写真というわけではない。
ピントがずれていても、感情や思いが伝わる写真があります。
ピントは写真の一部であり、意図的に使うことができます。 - ボケは写真の雰囲気を出すためのものではない。
ボケは被写界深度の結果であり、被写体との距離やレンズの焦点距離によって変わります。
ボケは写真の一部であり、意図的に使うことができます。 - 写真は現実を写すものではない。
写真は撮影者の見たものを写すものであり、現実とは異なります。
写真は撮影者の感情や思いを伝えるものであり、現実とは関係ありません。
見たまま撮るけど、見たままではないのです。
第6章:カメラの設定
本章では、カメラのレンズの選び方や設定の仕方をアドバイスしています。
カメラには、一眼レフやミラーレス、コンパクト、スマホなど様々な種類がありますが、どれが一番いいということはありません。
カメラの選択は自分の好みや目的に合わせて行うことが大切です。
普段使いならスマホが一番お手軽でしょうが、できれば自分が撮りたい写真や撮りたいシーンに合わせて、使いやすいカメラを選んでみましょう。
カメラの特徴や性能を知れば、撮影方法を工夫できます。
このとき、設定はコロコロ変えない方が写真の上達につながります。
露出やホワイトバランスやISO感度など、これらの設定を頻繁に変えると、写真の統一感や個性が失われてしまいます。
もし設定を変えるなら、その意図や目的をはっきりさせることが大切です。
撮りたい被写体やシーンに合わせてレンズや設定をうまく使い分けられれば、表現力の幅が広がるでしょう。
第7章:現像
本章では、RAW現像のメリットや方法、パソコンやデータの保存の仕方など、写真の現像にフォーカスしています。
RAW現像とは、カメラで撮影したRAWファイルというデータを、パソコンのソフトウェアで自分の好みに調整することです。
RAWファイルとは、カメラが撮影した光の情報をそのまま記録したもので、JPEGファイルとは違って、カメラが自動的に補正や圧縮をしません。
ファイルのサイズが大きくなりますが、RAW現像なら写真の品質や表現力を高められます。
大事なシーンでは特に活用しましょう。
また、パソコンとデータの保存方法も覚えておきましょう。
本書では、データの保存方法や媒体や頻度なども解説されています。
うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真:まとめ
- うまい写真といい写真は違う。
- いい写真とは、自分の感情や思いを伝える写真。
- 写真を撮る理由を明確にする。
- 写真の本や教え方には、表面的なテクニックやルールが多い。
- 写真を学ぶコツは、写真以外からインスピレーションを得る。
- 写真において最も重要な要素は光と距離。
- カメラの設定は自分の好みや目的に合わせて行う。設定はコロコロ変えない。
- デジタルも活用しよう。
以上、心を込めて写真を撮っていれば、その理由や楽しみ方を考え直すきっかけになるでしょう。
小手先のテクニックにとらわれず、まずは自分なりの表現を模索してみてください。
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