今回は、酒井富士子さんの『高配当5%投資術 新NISA+J-REITで月5万の「余裕」をつくる。』について解説します。
酒井富士子さんは、経済ジャーナリストであり、金融メディア専門の編集プロダクション『株式会社回遊舎』の代表取締役です。
ラジオやYouTubeなどでも活躍しており、最新の経済情報や投資の知識を広く伝えています。
そんな酒井さんが書かれた本書の投資スタイルは『新NISAでJ-REITを用いた、安定的な高配当収入の確保』です。
- J-REITの基本と魅力
- J-REITを新NISAで保有するメリット
- J-REITの選び方
- 利回り5%を得るポートフォリオの例
しかし、2024年7月現在、日経平均は最高値を更新しているのに、J-REITは市場全体が低迷していますよね。
こんな有様で投資する価値があるのですか?
それは目的によります。
資産形成ではなく、老後資金など、毎月安定した不労所得を得たい人にとってJ-REITは、安全かつ高利回りな家賃収入となります。
分配金が目的であれば、むしろ割安で買うチャンスが来ています。
この記事を読めば、毎月5万円を得ることができるようになるでしょう。
第1話:J-REITの基本と魅力
まず、J-REITとは、日本版不動産投資信託のことで、多くの投資家から集めた資金を用いて不動産に投資し、その賃貸収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。
J-REITに投資するメリット
少額から投資可能
数万円から投資できるため、不動産に直接投資するよりも手軽です。
現物の不動産を買うわけではないので、少額から投資できます。
分散投資
複数の不動産に分散投資することでリスクを低減できます。
J-REITなら、個人でも不動産の分散投資が可能になります。
専門家による運用
不動産の運用は専門家が行うため、投資家は管理の手間がかかりません。
自分で不動産のメンテナンスをしなくて済むのでラクです。
高い分配金
プライム市場の平均利回りが約2.17%、スタンダード市場の平均利回りが、約2.31%なのに対し、J-REITの平均利回りは約4.63%もあります。
出典:不動産投資家協会
高い利回りを安定的に実現できる理由
法人税の免除
J-REITは、利益の90%以上を分配金として投資家に還元することで、法人税が免除されるため、利益の大部分を配当金として支払うことができます。
安定した収益源
J-REITの収益源は、主に不動産の賃貸料であり、比較的安定しています。
賃貸契約に基づく収入が定期的に得られるため、安定した配当が期待できます。
分散投資
J-REITは、複数の不動産に投資することでリスクを分散しています。
これにより、特定の物件や地域のリスクを軽減し、安定した収益を確保しています。
専門的な運用
J-REITは、不動産の運用を専門とするプロフェッショナルによって管理されており、効率的な運用が行われます。
これにより、収益性が高まり、高い配当が実現されます。
投資法人としての性質上、利回りが高くなるようにできているのですね。
一方で、メリットがあれば、当然リスクもあります。
J-REITのリスク
金利変動リスク
金利の上昇により、J-REITの価格が下落する可能性があります。
今まさに晒されているリスクですね。
価格変動リスク
不動産市場の変動により、J-REITの価格が変動します。
災害リスク
地震や火災などの災害により、不動産の価値が下がるリスクがあります。
上場廃止リスク
経営不振などにより、J-REITが上場廃止となるリスクがあります。
不動産特有のリスクは、J-REITにもつきまとうわけですね。
第2話:J-REITを新NISAで保有するメリット
ここではJ-REITを新NISAで保有するメリットを解説します。
まず、NISAとは、少額投資非課税制度の略称で、個人が一定の金額までの投資を非課税で行える制度です。
売却益や配当にかかる約20%の税金が免除されるから、お得なんですよね。
さらに、旧NISAから新NISAになり、改善された点をまとめておさらいします。
- 非課税期間が無期限になった。
- つみたて投資枠と成長投資枠が併用できるようになった。
- 年間の非課税投資枠が最大360万円になった。
- 生涯投資枠が最大1,800万円になった。
このなかで特筆すべき点は、非課税期間が無期限になった点です。
旧NISAでは、つみたてNISAは20年間、一般NISAは5年間が非課税期間でしたが、新NISAでは無期限になりました。
これにより、いつ売却しても非課税で済むようになりましたし、配当金も非課税で一生受け取り続けられるようになりました。
これがJ-REITへの投資と非常に相性が良いのです。
J-REITへの投資妙味は、高い配当をもらい続ける点にあります。
非課税で永久に保有し続けられるということは、この高い配当を永久に受け取り続けられるわけです。
さらに、新NISAは、損益通算や繰り越し控除ができないため、無配の銘柄が含み損になっても売りにくいというデメリットが存在します。
J-REITなら仮に含み損になっても、ずっと高い配当を受け取り続けていれば良いということですね。
はい、たとえ含み損を抱えたとしても値動きを気にする必要はありません。
長期間配当をもらい続けていれば、トータルでは必ずプラスになるのです。
また、J-REITは配当控除を受けられませんが、新NISAであれば非課税なので、このデメリットも無くなります。
最後に、分配金の受け取りは、必ず『株式数比例分配方式』になっているか確認しておきましょう。
証券会社の取引口座で受け取る方式です。
これはJ-REITに限らず、配当を受け取る際は、この方式にしておかないと非課税の恩恵が受けられないため、注意が必要です。
SBI証券の場合は、『口座管理』の『お取引関連・口座情報』から『配当金受領サービス』で変更できます。
第3話:J-REITの選び方
ここでは、J-REITの銘柄選びのポイントを解説します。
配当利回り
まずは配当利回りを確認しましょう。
利回りが高い理由は、第1話で解説した通りですが、業績の悪化に伴い株価が下落している銘柄は、相対的に利回りが高く見えるので要注意です。
業績の推移などは『IR BANK』が確認しやすいです。
負債比率
次に、負債比率の具体的な指標として、LTV(Loan to Value)を確認しましょう。
LTVは、不動産の価値に対する借入金の割合を示す指標で、このように計算できます。
LTV = 負債額/物件価格
たとえば、5000万円の不動産に3000万円の借入金がある場合、LTVは60%となります。
LTVが高いほど、借入金への依存度が高く、リスクが高いとされ、逆に、LTVが低いほど、借入金への依存度が低く、リスクが低いとされます。
今後金利の上昇が予想されますから、負債の有無や多寡はより重要になりそうですね。
一般的には、不動産投資における理想的なLTVは80%とされていますが、J-REITの多くの銘柄は、40%台をキープしているので、50%以下を目安としましょう。
スポンサー
スポンサーは、J-REITの運営や成長において、非常に重要な役割を果たしています。
- 物件の供給
- 資金調達
- 運営サポート
- 信頼性の提供
大手のスポンサーがついていると、有利な運営がされていそうですね。
稼働率
稼働率は、保有している不動産にどれだけ入居者が入っているかを示しています。
稼働率が高ければ、分配金の原資になる家賃収入が効率的に入っているわけです。
稼働率は各ホームページに掲載されていますが、ホテル系以外は90%台をキープしています。
ホテルは景気や需要に左右されやすいのです。
たとえ高い稼働率に見えたとしても、稼働率を高めるために家賃を下げていないか、利益は堅調に推移しているかは、併せて確認するようにしましょう。
投資先の分類
J-REITは、投資対象となる不動産の種類や組み合わせによって、このように分類されます。
特化型は、特定の不動産物件にのみ投資するタイプです。
各タイプは、オフィスビル特化型、商業施設特化型、住居特化型、ホテル特化型、物流施設特化型、ヘルスケア特化型、商業施設特化型があります。
複合型は、2種類の不動産物件を組み合わせて投資するタイプで、複合型は、3種類以上の不動産物件に分散投資するタイプです。
このなかで今一番注目のタイプは、物流施設特化型です。
たとえば、物流施設特化型の代表銘柄である、(3283)日本プロロジスリート投資法人のテナントを確認すると、ZOZOやアマゾン・楽天・ジャパネット・モノタロウなど、EC(電子商取引)関連の企業や、ヤマト運輸や日本通運といった物流企業が名を連ねています。
このように、物流施設特化型は、ネット通販業界の拡大に伴い、これからも成長が期待できるでしょう。
ヘルスケア特化型も、今後ますます高齢化する日本において、需要が広がっていきそうですよね。
株主優待
J-REITのなかには、株主優待を実施している銘柄があり、欲しい優待があれば、投資対象となるでしょう。
たとえば、(3476)投資法人みらいは、1口保有していると自社指定ホテルの宿泊割引が受けられます。
投資法人みらいの優待は、有効期間内であれば、何度でも利用できるので使うほどお得です。
第4話:利回り5%を得るポートフォリオの例
本書では、投資目的や分散方法などに応じたポートフォリオの例がいくつも紹介されていますが、ここでは利回りを追求したポートフォリオの例を紹介します。
- オフィスビル特化型を中心にしたポートフォリオ
- 全分野へ分散投資するポートフォリオ
- 総合型で分散投資するポートフォリオ
- 毎月分配金をもらうポートフォリオ など
銘柄の選定方法は、単純に、J-REIT全58銘柄を利回りの高い順に選びました。
ただし、情報は古くなっている可能性があります。
最終的な確認や売買判断は、ご自身で行ってください。
(8975)いちごオフィスリート投資法人
いちごオフィスリート投資法人は、いちご株式会社をスポンサーとし、中規模オフィスビルに投資しています。
2024年5月31日時点で、保有物件数は93物件で、取得価格合計は2,258億円です。
稼働率は96.1%です。
JCRによる格付けは『A+』安定的となっています。
LTVは約44.50%で健全な数値といえます。
株主優待は、抽選ですがJリーグ観戦チケットが当たります。
NAVは0.91と1倍を割れており、割安といえます。
利回りは約5.86%となっています。
権利確定月は4月と10月です。
(3470)マリモ地方創生リート投資法人
マリモ地方創生リート投資法人は、株式会社マリモをスポンサーとし、地方のマンションや商業施設、オフィスなどに投資しています。
2024年7月2日時点で、保有物件数は55物件で、取得価格合計は524.31億円です。
2024年5月31日時点で、稼働率は98.1%です。
JCRによる格付けは『A-』安定的となっています。
LTVは約48.60%で健全な数値といえます。
株主優待はありません。
NAVは0.87と1倍を割れており、割安といえます。
利回りは約5.79%となっています。
権利確定月は6月と12月です。
(3492)タカラレーベン不動産投資法人
タカラレーベン不動産投資法人は、MIRARTHホールディングスグループをスポンサーとし、大都市圏の住宅を中心に、オフィスビルなどに投資しています。
2024年3月4日時点で、保有物件数は70物件で、取得価格合計は1,494.49億円です。
2024年6月30日時点で、稼働率は98.8%です。
JCRによる格付けは『A』安定的となっています。
LTVは具体的な数値は公表されていませんが、資金余力の確保に留意しつつ、原則60%を上限とする方針になっています。
株主優待はありません。
NAVは0.93と1倍を割れており、割安といえます。
利回りは約5.47%となっています。
権利確定月は2月と8月です。
(3476)投資法人みらい
投資法人みらいは、三井物産アセットマネジメントホールディングスと、イデラキャピタルをスポンサーとし、オフィス・ホテル・物流施設に投資しています。
2024年6月17日時点で、保有物件数は43物件で、取得価格合計は1,782.17億円です。
2024年5月31日時点で、稼働率は97.8%です。
JCRによる格付けは『A+』安定的となっています。
LTVは約45.2%で健全な数値といえます。
株主優待は、1株以上で自社指定ホテル宿泊割引がもらえます。
NAVは0.86と1倍を割れており、割安といえます。
利回りは約5.41%となっています。
権利確定月は4月と10月です。
(3488)ザイマックス・リート投資法人
ザイマックス・リート投資法人は、ザイマックスグループをスポンサーとし、首都圏のオフィス・商業施設・ホテルを中心に投資しています。
2024年2月29日時点で、保有物件数は18物件で、取得価格合計は434.69億円です。
2024年5月31日時点で、稼働率は99.7%です。
JCRによる格付けは無く、R&Iによる格付けは『A-』安定的となっています。
LTVは約40.90%で、健全な数値といえます。
株主優待はありません。
NAVは0.80と1倍を割れており、割安といえます。
利回りは約5.37%となっています。
権利確定月は2月と8月です。
(3451)トーセイ・リート投資法人
トーセイ・リート投資法人は、トーセイ株式会社をスポンサーとし、東京経済圏の中小規模オフィス、商業施設に投資しています。
2024年1月30日時点で、保有物件数は62物件で、取得価格合計は827億円です。
2024年5月31日時点で、稼働率は96.7%です。
JCRによる格付けは『A』安定的となっています。
LTVは約47.70%で、健全な数値といえます。
株主優待はありません。
NAVは0.90と1倍を割れており、割安といえます。
利回りは約5.40%となっています。
権利確定月は4月と10月です。
6銘柄でつくったポートフォリオの一例
- 新NISAの成長投資枠で、年間非課税枠の最大240万円分を投資した場合を想定。
- 各銘柄の投資金額は約40万円前後。
- 価格と利回りは、2024年7月9日時点で計算。
結果、分配金は年間約132,420円になりました。
新NSAなら非課税で受け取れるので、この額面がそのまま利益になります。
平均利回りは約5.55%です。
総合型が多く、1口当たりの価格も比較的安い銘柄ばかりなので、少額からでもポートフォリオを作りやすいでしょう。
成長投資枠5年分の1,200万円を投資できれば、毎月5万円という目標も達成できそうですね。
高配当5%投資術:まとめ
- J-REITは、賃貸収入や売却益を投資家に分配する金融商品。
- 永久非課税の新NISAは、J-REITへの投資と相性が良い。
- 安全なJ-REITを選ぶには、LTVやスポンサーなどを確認する。
以上、本動画では紹介しきれていない、資産形成期の資産の増やし方などを知りたい人は、ぜひ本書をご覧ください。
- 老後資金の必要性
- 資産形成期の資産の増やし方
- 各個別銘柄の概要
- 新NISAのメリット・デメリット など
本書では、現在上場しているJ-REIT全58銘柄の一覧も公開されています。
投資口価格や利回りはもちろん、格付けや稼働率、NAV倍率やLTVなどもひと目でわかるので、比較検討しやすいですよ。
本記事の内容は、youtubeでも視聴することができます。
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